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右側兄さんのSS置き場。がくカイが主。
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サイハテが元。死後ネタ。カイトとマスター。

『彼女』はマスターのお姉さんです。


カイマスとありますが、取りようによってはマスカイにも。
基本、カイマスで話を考えてしまうので(汗)。






*****************

 目の前で閉ざされた扉をただじっと見つめる。

「本当は貴方も入れてあげたいんだけど……」

 そう、辛そうに眉を寄せた彼女に「大丈夫です」と返した。
 死を理解出来なかったアンドロイドが主の遺体を奪う、という事件が少なからず起きてから、僕等はこの扉の向こうには行けなくなった。
 踵を返して、建物の外に出る。
 なんとなく空を見上げた。
 昨日までの雨が嘘のように、澄んだ青が広がっている。
 初めてマスターと会ったときに、僕の瞳と同じだ言われた色。
 一番好きな色だ、と笑った貴方の顔を鮮明に思い出す。
 ヒトは僕等より脆いものだと教えられた。長い時を過ごすことは出来ないと。
 それでも僕は作られ、『大切な存在』と巡り会う幸福を望む。
 す――っと長い煙突から灰色の煙が立ち上る。
 目を閉じて深く息を吸い込む。
 そして、マスターが亡くなる寸前まで作っていた曲を口ずさんだ。
 出先で事故に遭い、即死だったらしいと聞いた。
 その割には葬儀で見たマスターの表情は安らかだった。
 音がつまり、歌が続けられなくなる。

「……泣けないのが、こんなにつらいなんて思わなかったですよ……」

 悲しいことや辛いことがあったら、涙を流して感情を整理するんだと教えてく
れた。
 ――違う時間の流れを生きて、いつか別れること、ちゃんと知っていましたよ。
 でも――。

「……少し、早すぎませんか? マスター……」

 貴方のうたをたくさん歌いたかった。
 もっと、貴方と同じ時間を過ごしたかった。
 もっともっと、貴方と……。

 大切で、大切で――大好きなマスター。
 いつか、僕が貴方の元に行けるまで、せめて歌声だけでもそばにいさせて下さい。

「……おやすみなさい、マスター」 

 雲一つない空を上って行く煙がなくなるまで、僕はずっと歌い続けていた。


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