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adore倉庫

右側兄さんのSS置き場。がくカイが主。
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Innocent fragileの後日談2

こちらはカイトver。Innocent fragileの頭文字を略すとIfなことに気付いて、小躍りした人間です。←
なんだか面白い。

ちょっと文体が違うとは思いますが、ご容赦下さい。

 暗い暗い――――空に似た場所をふわふわと漂っていた。
 時折、遥か彼方から聞えてくるものに耳を澄ませる以外はずっと。
 目を開けているのか、閉じているのかもわからない状態。
 ひどく空虚で、どこかが空っぽだった。

 『       』

 浮かびかけて、また消えていく言葉。
 掴みたいのに、心がそれを拒否しているのがわかる。
 大切な――大切だった、なにか。

 ――――?

 遠くのほうで、奇妙な音が聞えた――刹那。

『え、ちょ……っ!?』

 無限に広がっていた黒に、色とりどりの光が浮かび上がる。
 覚えた不安をも吹き飛ばすような煌きに、そぅっと手を伸ばす。
 あともう少しで触れられる――そう思ったとき、急に体に衝撃が走った。
 息苦しいような引っ張られるような、そんな感覚。
 きつく瞼を閉じ、奥歯をかみ締める。

『……ふ……』

 不安定になっていく呼吸に視界が霞んでいく。

 ――――引きずられる。そうしたら、もう―――。

 きっとこの現象は二度と起きない。確信に似たものが頭を過ぎる。
 
 ――――いやだ。また会いたいのに……。

 体の奥から沸きあがってきた感情に、カイトは小さな瞬きをした。何度も何度も。

 一体、誰に、会いたい、のだろう……?

 思考も動作も、すべて止まる。靄の向こうにある影を、全身で見つけようとする。
 大切な、大切な――――。

『…………!』

 洪水のような音の中に聞えた、声。
 闇を漂っていたときも、ずっと聞いていた歌声。
 その声がひどく懐かしい。
 空を仰ぎ、息を吐くと、その声に身を任せるように静かに瞼を閉じた。



「…………っ」

 起動と同時に襲われたのは、息が止まりそうなほどの強い衝撃だった。
 咳き込まないように、慎重に呼吸を整え始める。

 ――――ひどい、起動のされ方だ。

 誰かの影が入り暗くなった視界で、純粋にそう思う。
 カイトにとってこれが初起動となるわけだが、普通はもっと控えめ、というかこんなに激しくはないのではないか。
 文句の一つでも言ってやろうと顔を上げ――そのまま固まった。
 当然、マスターとなる人間だと思っていた影が違ったからだ。
 長い紫色の髪に、薄い水色の瞳――明らかに人間ではない。視線が合うと、不意に微笑まれた。

「やっと起きたな」

 弾んだ声で告げられるが、意味がわからず小さく首をかしげた。

「あ、の……?」
「俺は神威だ。おはよう――カイト」

 笑いながら差し出された手をぱちぱちと見つめる。
 突然の状況に頭がついていかないが、彼に呼ばれた響きは心地よかった。
 そろそろと手を伸ばし、神威の手に自分の手を重ねると、精一杯の笑みを浮かべ

「おはようございます――神威」

 そう呟いた。
 
  
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